TOP  >  対談・トップインタビュー  >  防災を日本の文化に

対談・トップインタビュー

「防災」を日本の文化に

災害に強い社会めざして 守れ いのち!
東寺森泰長執事長、ミサワホーム平田俊次代表取締役専務、防災検定協会平野理事長の鼎談

災害に強い社会の実現をテーマに10月6日、京都市南区の東寺で、東寺の森泰長執事長、ミサワホームの平田俊次代表取締役専務、防災検定協会の平野啓子理事長が鼎談を行った。各方面からの防災への取り組みを報告し、教育や事前知識の重要性について話し合った。オブザーバーに日本火災学会の田中哮義会長が加わった。司会は産経新聞大阪本社の藤浦淳文化部長、主催は被災地の子供の心身の育成を支援する「真っ向勝負プロジェクト実行委員会」(松土直代表)。
遠藤三紀夫  氏

東寺 森 安長 氏 (写真 中央)

ミサワホーム 平田 俊次 氏 (写真 右)

平野 啓子 氏 (写真 左)


森さん  文化財継承 末代まで備え

平田さん 最新の知識でリスクに対応

平野さん 日常の〝盲点〟に気づいて

藤浦 地震や台風、水害と、近年災害が頻発しています。そんな中、東寺では今年、災害時の協定を寺院としては初めて警察と結んだとお聞きしました。
神奈川県座間市・遠藤三紀夫市長、防災検定協会平野理事長と対談地震で近隣の警察署が被災した際、境内に仮設の警察署を開設してもらうのが一番の趣旨です。東寺が防災への総合的な取り組みを始めたのは昭和53年。そこから徐々に充実させ、関係機関との緊密な連携もできています。地域の備えのために、中核となる東寺が強くなる必要がありますから。最新技術も取り入れて、今後も災害に強くしていきます。
平田 ハウスメーカーとして地震に対応して制震技術などを開発してきましたが、近年の災害は多様です。そこで現在は、顧客の住んでいる地域に応じた情報を提供する取り組みをしています。土地ごとに蓄積した過去の災害データを伝えて、防災意識を高めてもらうのです。
平野 協会ではジュニア防災検定を実施しています。この防災検定は、一般的な検定試験ではありません。一回の試験だけでなく事前と事後の課題に取り組むことで、子供とその家族にいろいろな角度から防災について考えてもらうものです。自宅の危険な場所や地域の避難経路など、日常の盲点に気づいてもらうことが主眼です。
藤浦 住む家も重要ですが、住む人の意識が大切ですね。阪神大震災(平成7年)の前と後では意識は変わりましたね。
京都でも昔は大地震があったと知ってはいましたが、実感が出てきたのは阪神以降です。
平田 最近は大きな地震も珍しくないですが、遠い土地のものを実感としてとらえるのは難しいですね。そのためにはリスクをシミュレーションすることが役立つでしょう。起振機で震度7を体験するだけでも違います。
平野 私の出身の静岡では何かあって当たり前という意識が根付いています。地元の沼津では津波が急にやってくる物語もあって、世代を超えた伝承の知恵がうかがえます。
寺の場合、文化財も継承していく必要もあるので、末代まで備えの意識が強く求められます。
田中 意識を高めて伝承していくには、日本で災害を免れる土地はないという覚悟がまず必要です。
平田 リスクに対応する術を持っているということが重要で、最新のものを知ることも大切です。阪神大震災の時、通電後に火災が発生しました。今はそうならないためのコンセントもあるので、これを導入するといった備えです。
今、学校では防災を教える状況にはなっているんですか?
平野 教える側の意識と知識によって差があります。検定でそこをサポートできればと。例えば事後課題でハザードマップをつくる子が、いろいろ調べるうちに地域の歴史に触れ、文化財に触れ、住民に触れるんです。最終的には、防災自体が日本文化の一つとなればいいですね。
平田 それぞれの地域にはお寺があって、そこを中心にして防災も考えていくのはどうでしょうか。そしてスポーツを通じて(真っ向勝負プロジェクトで)東京と南相馬の子供たちとの交流が生まれたように、地域同士を結びつけて強い社会をつくる。そんな動きが出ればいいですね。
地域に貢献できれば寺院としては何よりです。ただ今は少子高齢化で人口も減り、各地で廃寺も増えていますから取り組みもなかなか大変かもしれませんが。
田中 例えばお寺に伝わる古文書などの解読も大切です。災害の記述も見つかるかも知れないし、そんな文化が日本には蓄積していますから。

 

●メモ

 

◆東寺と京都府警南署の災害協定  老朽化した同署庁舎が被災して使えなくなった場合に、境内を臨時警察署として使用することを、今年5月に申し合わせた。行方不明者捜索や緊急輸送窓口だけでなく、被留置人の移動、拳銃や証拠物品の移管など、すべて機能移転も想定している。

◆ジュニア防災検定  一般財団法人「防災検定協会」が主催する小・中学生向けの検定で、内閣府や消防庁などが後援。昨年12月にスタートした。家庭で話し合う事前課題、本試験、自由研究を提出する事後課題がセットになっている。今年度は全国で約6千人が受検。

◆真っ向勝負プロジェクト実行委員会  公認スポーツ指導者でもある松土直氏が、約10年前に立ち上げた地域交流コンサルタント。スポーツ交流を通じ子供に夢を実現する力をつけてもらうイベントなどを実施。東日本大震災以降は、防災を通じ自ら命を守る力を身につけてもらう情報講座も開催している。




一覧へ戻る